「里山ビジネス」 玉村豊男 著
長野県の山奥に「ヴィラデスト ガーデンファームアンドワイナリー」という
ワイナリー兼カフェレストランがあります。
設立者である玉村豊男さんの肩書は
「エッセイスト・画家・農園主・ワイナリーオーナー」。玉村さんのことは
ずっと以前、田中商店さんに教えていただきました。
玉村さんの著書は何点かありますが、先月出た「里山ビジネス」を
本屋で見つけてさっそく拝読。田舎で暮らす自分にとっては
非常に興味深い内容でした。で、まわりの人に読んで欲しいなとここに書きました。
ビジネスって言葉が使われてありますが、数字をただ追うだけの
ビジネスばかりがすべてではないと思い知らされました。こちらの本といい、
最近は反・拡大志向の農業関連本が本屋さんでも売れ筋に挙げられている気が
しています。それは自分的にも腑に落ちる内容だったりします。農業従事者じゃないけど。
一番効率の悪い里山で、最も割に合わないビジネスが何故成功したのか? 熊が徘徊する里山の森の一角に個人で立ち上げたワイナリーとレストラン。その道のプロの誰もが無謀だと断言した素人ビジネスが、何故客を呼び寄せ成功に導かれていったのか? ビジネス上の計算はなくとも、やりたいことのコンセプトは明快にあった。里山の自然の恵みとともにある仕事をやりながら暮らしを成り立たせる、それが里山ビジネス。拡大しないで持続する、愚直で偽りのない生活と共にあるビジネスとは? グローバリズムの嵐の中での日本人の生き方を問う一冊である。
お次は本書からちょっとだけ引用。著者である玉村さんが
果実酒製造免許を申請する時に税務署に提出された
ワイナリーの設立趣意書に書かれた一部です。
農業は続けることに意味がある。その土地を絶えず耕して、そこから恵みを受けながら、人も植物も生き続ける。それが農業であり、人間の暮らしである。ワイナリーを中心に地域の人が集い、遠方から人が訪ねて来、そこでつくられたワインや野菜や果物を媒介にして人間の輪が出来上がる。それが来訪者を癒し、地域の人々を力づけ、双方の生活の質を高めていくことにつながるだろう。
ワイナリーじたいは取り立てて大きな利益を生むものでなくても、そうした、農業生産を基盤として地域の永続的な発展と活性化を促す一つの有効な装置として機能するとすれば、これほど大きな価値を実現できるものは他に類がないと思う。玉村豊男「里山ビジネス」本文より一部引用
この本を読みながら、沼隈という小さな町の小さな酒屋の若店長が
ぶどうという地域の特産物販売について、かつてブログに書いていた
「ぶどうは製品ではなく、作物なんです」という言葉を思い出しました。
あと、西条・亀齢酒造に行ったときの杜氏の話も思い出し。
「私たちは酒を造りに来ているわけであって、そうである以上、
ここにいる(酒造りの)間は【酒を中心にした】生活を送ります。
酒造りにおいては、人間の理由で酒の成育を狂わせてはいけない。
食事も睡眠もすべて酒造りの二の次。それもこれもすべて
一本でも良いお酒をお客様の元に届けたい、その一念から」
商売人の間では流行り言葉のような「ものづくり」という言葉。
何のためにものを作るのか。自戒を込めて、もう一度しっかり足元を
見定めたいと思う良いきっかけを与えてもらったように思います。本書に感謝。
